「プロセスワーク」という言葉を聞いたことはありますか?

これはアメリカの著名な心理学者であるアーノルド・ミンデル氏が提唱した考え方です。アメリカではプロセスワークと呼ばれる傾向にありますが、日本ではプロセス指向心理学とも呼ばれています。

今回はこの「プロセスワーク」について具体的にご説明します。人財の育成や働く環境の組織づくりに関わっている方は知っておいて損はない内容かと思います。

「プロセスワーク」とは? 

「プロセスワーク」とひとことで言っても、その種類は実にさまざまで国によってもまちまちです。それでも共通して言える基本的な点としては、今の自分自身が抱える悩みの根底にあると気付けていないけれど気付く必要がある葛藤や幼少期に生まれた誤った理解を正しい方向に直していくものです。

人間は「何かがきっと間違っている」と思うことは誰しもあるものですが、だからといってそれならどうすればいいのかわからないという悩みも同じように誰がいつ抱いてもおかしくありません。

この問題を解決するための一番シンプルな方法は、自分自身の内面を整理整頓してそこでの葛藤をクリアにしていくという方法です。そして、ここでこれまでの思い込みをゆっくりでも着実に冷静に見直して解決していくこの過程がずばり「プロセスワーク」です。

アーノルド・ミンデル氏はもともとマサチューセッツ州で物理学を専門に学んでからスイスの心理学者兼精神学者のカール・グスタフ・ユング氏の研究所で分析心理学の知識を深めました。その活動の代表的な功績の一つが、プロセスワーク指向心理学、すなわちこれからご説明していく「プロセスワーク」の創始者としての活動です。

ちなみにアーノルド・ミンデル氏は体験したことが夢に反映されるという点に着目した研究の第一人者としても知られています。今日にもある夢診断の生みの親と言える存在として世界中を転々としながら精力的に研究活動を続けました。

「プロセスワーク」における3つのレンズ

プロセスワークでは「現実」を3段階でレベル別に分けています。そして、カウンセラーやコーチはこの現実のレンズに合わせてクライアントに対応します。ちなみにプロセスワークにおけるこのランクとは人間関係において影響を与える要素とされています。

3つのレンズとは?

ここからこの3つのレンズについて順にご説明していきます。まずは「合意された現実(Consensus Realiy/CR)です。

これは大勢の人が観察しながら賛同できる客観的な行動や事実、発言を指します。例えば、誰かが椅子に座ってデスクに置いているパソコンを見ながら手元のキーボードで文字を入力してメンバーに配布するための文書を作成して発信することは、「合意された現実」の一例です。

次に、「ドリームランド(Dreamland/DL)」です。これは他人と他者と簡単には合意できないような感覚や感性、といった主観的な真実で、身体的な感覚も含まれます。ドリームランドは前述の「合意された現実」が生まれるエネルギーとされています。一例を挙げるなら、例えば庭掃除をしている際に腰が痛いという身体的な感覚等です。

 最後は、「エッセンス(Essence/E)」です。これはなかなか自分自身では気づきにくい極めて小さなエネルギーで、前述の「合意された現実」と「ドリームランド」の生みの親的なエネルギーとされています。

プロセスワークにおけるストレッチの例

もう少し理解しやすいように、ここで日頃から意識して実践している方も多いストレッチを例に挙げておきます。

「仕事のレポートを仕上げて部下と情報をシェアしたい」という考えと、「座りっぱなしでレポートを完成させたら腰痛がひどいから休みたい」という体の声があるという場合を考えてみてください。

ここでプロセスワークの場合には、このいずれのエネルギーも無視しません。どちらも無視せず、腰痛を緩和する設計のデスクチェアを購入するといった行動につながります。

「プロセスワーク」を理解する上で知っておきたい基本用語

プロセスワークを理解するためにはプロセス構造への理解は必須です。この理解のためには欠かせない代表的な用語をまとめて簡潔にご紹介しておきます。

一次プロセスと二次プロセス

まずは一次プロセスです。これは、今の自分が認識している体験や言動、また自分自身を指します。「あなたはどういう人ですか?」と聞かれた際の答えと思っていただけるとわかりやすいでしょう。

これに対して二次プロセスは自分自身では認識していない自身の体験や行動、また自分に対する意外な印象も含みます。例えば信頼できる尊敬する上司との突然の別れで上の空になって食も進まないというようなケースです。

「エッジ」・「シグナル」・「フィードバック」

ここではプロセスワークを理解するうえで基本的なこれら3つの用語についてまとめて簡潔に説明していきます。

まず「エッジ」とは今ご説明した一次プロセスと二次プロセスの境界に位置づいています。これまでに積み重ねてきた経験やその結果として生まれた価値観が形成されるものです。例えば上司から新たな資格の取得を求められた際に「無理」と思ったら、そこにはエッジがあります。

ちなみにこのエッジは、日常の一次プロセスを非日常的な二次プロセスから守るために存在しています。つまり、二次プロセスは一時プロセス的には受け入れにくい存在です。

 次に「シグナル」です。私達は誰かと話をしている際、目の前にいる人は言語的にもそうでない形ででも、何かしらのメッセージを発信しています。

このメッセージはカウンセラーやコーチは区別して受け止めることが求められ、大きく3つに分けられます。まず、目の前の人が発信した文字や言葉は「言語シグナル」と言われます。そして目の前にいる人の所作や表情で生まれるシグナルは「非言語シグナル」と言われ、急に誰かが会話に入ってきたような環境からの影響も受けるシグナルです。

そして3つ目は「ダブルシグナル」です。これはあらゆるシグナルの中で話す人が想定していない状態に当てはまります。例えば「明日からダイエットをするのでお菓子を食べるのはやめる」と話した人が翌日の朝ごはんにパンケーキを食べに行くといったケースはダブルシグナルが発信されたと言える一例です。

 最後に「フィードバック」です。場合によっては目の前にいる支援者が関与してくるケースもあり、この関与によって支援者が目の前にいる人に何らかの形で介入することがあります。その介入を受けて生じるシグナルが「フィードバック」。

フィードバックは「ネガティブ・フィードバック」と「ポジティブ・フィードバック」に分けられており、介入によって生じる反応が少ない場合が前者、大きな反応がある場合が後者です。

例えば、介入した際に相手がはっきりとうなずいて見せたり腕を組んで悩んだしぐさを見せたりすると、「ポジティブ・フィードバックが返ってきた」と考えます。もっと深く追求するまで介入するかどうかはこのポジティブ・フィードバックの有無で決定します。ポジティブ・フィードバックがあれば、その部分についてさらに介入していくというわけです。 

注目度を高めている「プロセスワーク」によるコーチング

今日の日本ではこのプロセスワークを活用したコーチングへの注目度が高まっています。プロセスワークはかなり自由自在で、あらゆる現実的な目標に実践的な取り組み方が可能です。

課題に対して肉体的な動きや感覚も使用する過程でさらに理解と納得が深められ、ネガティブなシチュエーションにもあらゆるポジティブな可能性を発見できるようになります。

簡潔に表現するなら、日々の生活や仕事においてあらゆる意識レベルでの発見を実践して活用できるようになると言えます。 

プロセスワークのまとめ

プロセスワークとは「起こっていることには意味があり、それらを取捨選択しないで大事にしながらプロセスを完遂することで本来あるべき生き方にリセットするための心理的サポート」ということがおわかりいただけたのではないでしょうか。

特に「自分は本当のところは一体どういう人間?」という疑問を本質的にクリアにしていきながら目の前のトラブルの根本的なところにあるものを見つけることができるのが、プロセスワークです。

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