「セルフ・エフィカシー(自己効力感)」を知っていますか?モチベーションを維持するには、セルフ・エフィカシーと呼ばれる自己効力感が必要不可欠というお話を前回しました。

今回は、モチベーションを高めるだけでなく、維持(キープ)できる方法を知るべく、原因帰属理論についての理解を深めていきましょう。

失敗の原因を理解できる原因帰属理論の定義

私たち人は、何か失敗したとき必ずといって良いほど「なにか失敗の原因」を作り出します。

例えば約束の時間に遅刻してしまったり、寝坊してしまったときに「昨日〇時まで起きていたから」などというような言い訳をしてしまう方もいるでしょう。

そして成功の場合も然り「努力したから成功できた」というような成功のきっかけを人は作ってしまうのです。

この成功・失敗のきっかけ(原因)を原因帰属理論といわれていて、一般的には原因帰属の在り方により、その人の行動やモチベーションに影響を与えるとされています。

もう少し詳しくみていきましょう。

原因帰属理論とは結果の原因を推測し判断すること

失敗したときや、成功したときの「原因」「きっかけ」などを説明するとき、結果の原因を推測し、判断しますよね。

このときのプロセスが原因帰属理論です。

簡単にいえば、「何を原因にしているのか」を認知の過程にする研究した領域のことをさします。そして、この「原因」が行動やモチベーションにつながり、今後の行動に影響を与えるとされているのです。

そして、この原因帰属理論を初めて提唱したのが、ドイツの心理学者である、フリッツ・ハイダー。

フリッツ・ハイダーは対人関係の心理学という本を1958年に出版。帰属理論を世の中に広めました。ハイダーの帰属理論はその後、ベルナルド・ワイナーなど複数の研究者によってさらに発展していくことになります。

発展していった提唱は次の通りです。

  • ロッターの統制の所在:行動や評価の原因を自己や他人のどこに求めるのかという概念
  • ワイナーの原因帰属理論:統制のみならず、安定性の組み合わせも含めた4タイプを提唱
  • ハロルドの共変動モデルの割引・割増原理:行動の効果の原因を提唱したもの
  • ベムの自己知覚理論:手がかりを利用して推測する情動の錯誤帰属を提唱
  • 対応バイアス:他社の行動はその人の価値観のみで評価を下す、社会的であり、状況的な影響は軽視されることを提唱

これらはフリッツ・ハイダーの帰属理論を元に提唱されている発表ですが、思い返してみると、「確かにそういう状況に直面したことある」という方もいるでしょう。

【Weinerの研究】原因帰属は3つの次元から成り立つ

ワイナーの研究によると、原因帰属にはたびたび3つの次元がでてきます。

ここからはよく使われる3次元を詳しくお話しましょう。

内在性-内的であり外交的

内在性とは、原因が自分自身にあるのか、もしくは原因が外にあるのかを判断する部分です。

例えば、次の例を見てみましょう。

  1. なまけてしまい、これまで持っていた特技ができなくなった(練習ありきでできるようになっていたこと)
  2. 両親によって、これまでしていたことを禁止されてしまい、できなくなった

1の場合の「できなくなってしまった」原因は練習を怠ってしまった自分自身になるので、「内向性」といえますが、2の場合は禁止されてしまったことになるため、「できなくなってしまった」原因は外交的になります。

つまり、原因が自分自身にあるのか、それとも周りが原因なのかを判断することが内向・外交を知ることによってできるのです。

安定性-安定的であり不安定的

誰もが一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

「公務員という仕事は安定しているから、就くなら公務員」

「大企業に正社員で就職していれば安定してるから大丈夫!」

「国立大学に入学しておけば、人生安泰」

安定的という保証はどれもないのに、両親からも周りからも結構言われる言葉ではないでしょうか?

そして誰もが「安定的だ」と納得しがちですよね。

一方で、

「フリーランスやフリーターは不安定的」

というような、偏見にも似たような言葉を聞いたこともあるでしょう。

これらは職業や現在のポジションが安定なのかどうかという点で原因がどちらにあるのかを分析できる基準を示すものです。

統制であり非統制

統制や非統制は、自分の状況を自力でコントロールしているかどうかの認知の部分であり、外部統制は、他人のコントロールの認知によって生じるため、モチベーション維持をするためには内部統制での自己認知が必要になります。

内部統制として、該当するところは普段の努力や一時的な努力、能力やその時の調子や気分などが該当し、統制不可能な部分は一時的な努力やその時の調子(気分)となるので、なんとなく納得する方もいるのではないでしょうか。

【モチベーション維持】理想の原因帰属2種

モチベーション維持に必要な理想の原因帰属は、普段の努力と暫定的な努力にあります。

①普段の努力

モチベーションをあげる際に重きをおきたいところは、日常的な普段の努力です。

ここで普段の努力を振り返ることにより、成功や失敗をしたのちに、さらなる努力へつなげられるので、大きなモチベーションにつながります。

②暫定の努力

モチベーションの維持、向上には努力が必要不可欠です。そして普段の努力が必要ではあるものの、一時的な努力も必要といえます。

一時的な努力は少し頑張ってみるかという気持ちで成り立つのです。つまり、モチベーションの維持ではなく、向上、ちょっとしたきっかけになるということですね。

もし今モチベーションをあげたいと考えているなら、まずは少し頑張ってみるかやってみるかというちょっとした暫定的な努力をしてみましょう。きっとモチベーションが湧きおこりますよ。

モチベーションと原因帰属理論との関係性

では、先述にあるように失敗や成功のきっかけをさす「原因帰属理論」ですが、モチベーションとはどういった関係があるのでしょうか。

きっかけ、原因にはなりますが、モチベーションには深く関係しないのではないか・・・?と感じますよね。実は、ここで先ほど少しリストにまとめた「ロッターの統制の所在」と「ワイナーの基本提唱の原因帰属理論」を組み合わせて考えることができます。

ロッターの統制の所在とは、ローカス・オブ・コントロール(LOC)といい、行動や評価の原因や自己や他人のどこに求めるのかという教育心理学の概念のひとつです。

例えば、学校で良い成績を収めたいときに統制の所在を活用して、教育心理学の概念をまとめると以下のようになります。

安定的(変化しにくい)不安定的(変化しやすい)
統制可能統制不可能統制可能統制不可能
内部要因日頃の努力能力直接の努力気分
外部要因教師の態度課題の困難度異例の援助度

内部要因として該当することは「日頃の努力」ですが、特に努力せずとも秀でていることは、「能力」ですし、これは誰もが一度は聞いたことがありますよね。加えて、不安定的な部分に該当するのが「気分」や「運」です。運にいたっては継続することも難しく、気分もその時に応じて変わってきてしまいます。

つまり、この概念は人が「良い成績を収めたいとき」の感情をまとめたモチベーションの一覧でもあり、原因帰属理論と結びつけることが可能なのです。

まとめ

人はモチベーションをあげたいと考えてはいても、なかなか上がらないものであり、人によってはずっとモチベーションが上がらないからなにも手につかないということも少なくありません。

だからこそ能力や課題難易度に原因を帰属させるのではなく自分自身のモチベーションをあげるための一時的な努力と継続していく努力を内部要因から変えていかなくてはならないのです。

不安定的な要素を安定的に変えていくなら、まずは課題難易度の原因帰属に対する考え方を変えてみましょう。ここで物の見方を変えることで、新しい世界が開けますよ。

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