「サーベイ」という用語と「フィードバック」という用語のどちらもご存じの方は少ないのではないでしょうか。
特に管理職や人事に関わっている場合、組織開発の基本中の基本として、「サーベイフィードバック」という言葉の意味について理解しておくことは大きな価値をもたらします。特に管理職研修等でも取り上げられやすい用語の代表格ですが、その場で用語の説明を受けただけで
初めて聞いたという方もいらっしゃるかもしれませんが、サーベイフィードバックへの期待は右肩上がりで高まっています。そこで、今回はこの「サーベイフィードバック」についてご紹介します。
「サーベイフィードバック」とは?
最初にこの「サーベイフィードバック」という言葉について簡潔に説明しておきます。
「サーベイフィードバック」という言葉についてひと言でシンプルに表現すると、「『サーベイ』を実践して得られたデータを、活用する場に『フィードバック』することによって、組織に新しい改革をもたらすためのテクニック」について組み合わせた用語です。
従業員を対象にした調査の結果を分析し、そして従業員本人にも一人ひとりその結果を伝えて共有することによって組織の改善を目指せる組織開発手法として日本でも注目度が高まっています。
エンゲージメントサーベイ、モチベーションサーベイ、組織サーベイ等複数あり、いずれも人材開発や働き方の改善と言ったあらゆる場面で活用できるデータの取得が可能です。そしてこの改善効果を大きく左右するのが、それぞれの調査を終えてからの「フィードバック(FB)」の有効活用です。
サーベイフィードバックが重要視されてきた理由
「サーベイフィードバック」という言葉についてひと言でシンプルに表現すると、「『サーベイ』を実践した結果得られたデータを活用する場に『フィードバック』することによって組織に新しい改革をもたらすためのテクニック」についてこの2つを組み合わせた用語です。
この「サーベイ」と「フィードバック」は何らかの組織に所属している人であれば知っておいて損のない基本用語なので、それぞれの用語について簡単に説明しておきます。
「サーベイ」とは、物事が今どのような状態にあるのかをトータルして理解することを目的とした調査です。そのため、自然と基本的に広範囲を対象とした調査となります。例えば会社におけるサーベイは広い範囲が対象になりがちで、この組織に関係している人財はまるごと対象になります。
次に「フィードバック」についてですが、これは学校のレポートや論文において教授から経験したことがある方も少なくないかもしれませんね。誰かの行動に改善点を含めた評価をしてよりよい方向にベクトルをシフトすることです。 実践例としては定期的に実施される人事面談やプロジェクトの経過報告等が挙げられます。
サーベイフィードバックへの期待の高まりについて
サーベイフィードバックは今日の日本のビジネスの場においてどんどん期待が高まってきています。これからサーベイフィードバックについてお話していく最初の段階で、このサーベイフィードバックに対してどうして期待が高まる傾向が強まってきたのかについて大きく2つのポイントに分けてご説明しておきます。
職場の多様化
1つは、「職場の多様化への対応」です。以前の日本における職場環境は「年功序列・企業別組合・終身雇用」の3点が「三種の神器」と表現されていました。
この高度成長期は1950年代の半ばから1970年代の半ばまでなので、この時期に現役でサラリーマンとして働いていた方は今日ではかなり少なくなってきました。とはいうものの、当時は世界的にも異例の日本の急成長ぶりで「日本的経営」と評され、海外からも大変注目されたものです。
ただし、この経営手法には長期的な安定が求められなくなると変化に対応できずに淘汰されるリスクもあります。
終身雇用を求める若者が減り、外国籍の方の雇用への対応も注目されてきている風潮においてはこの日本的経営への柔軟性は自然と求められる状態です。
エンゲージメントの向上
もう一つのポイントは、「従業員のエンゲージメントの向上」です。「モチベーションを向上させる」という表現は耳にしたことがある方の中にも「エンゲージメントを向上させる」となると耳にしたことがないという方が一気に減ります。
それでもエンゲージメントの向上は企業や組織の利益の向上にダイレクトに影響します。エンゲージメントにおいて日本は世界的に極めて低い数値となっており、もちろんここには明らかな理由があります。その理由はずばり「やる気」です。
あまりにも当たり前と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、アメリカの大手コンサルティング会社による調査では、日本は熱意あふれる社員の割合がアメリカの6分の1以下という結果が出ています。この当たり前が不足しているために離職率が高止まりしている企業は後を絶ちません。
サーベイフィードバックのメリットとは
ここからはサーベイフィードバックにおける2大メリットと注意点についてご説明します。
まず2大メリットですが、これは「可視化の意義」と「回答へのモチベーションアップ」です。同じ企業の同じ部署に所属していても、社員全員が現状のルールや目標について必ずしも同じように感じていることはほぼあり得ません。そこで個々人が感じている内容を現場の生きた意見として集約すると、誰もが目からうろこの課題が見つかる可能性があります。
特に在宅ワーカーが多い職場の場合、サーベイフィードバックの実践によってグループや組織が持つべき目標やクリアにするべき課題の順位という点で共通認識を持つことにつながります。
そして、いくら力を入れて実践したサーベイフィードバックであったとしても、このサーベイに対する該当者のモチベーションが低ければ本末転倒です。サーベイに協力するモチベーションを高めるということはサーベイフィードバックにおいては基本中の基本とも言えます。
社員に対するサーベイは社員が日頃から抱いているあらゆる感じている課題を集約できるところまでは可能でも、この結果について人事部門が全てに応えられることは物理的にも不可能です。 しかし、社員からすると自身の回答内容に会社がアクションを起こしてくれないと感じて次のサーベイに協力するモチベーションが下がるケースにつながりやすいだけでなく、会社への不信感の原因にもなりかねません。
サーベイフィードバックの注意点
最後に、実際にサーベイフィードバックを実践する場合に特に覚えておきたい3つの注意点をお伝えしておきます。
まずは「やらされている感」を生まないことです。何に対するものかをきちんと伝えなければ、「よくわからないし面倒だけど、まあやっておくか」といった意識につながります。特にリーダーシップが求められる役職においては目的と価値への理解の共有は大変重要です。
次に「変化へのストレスに対する理解」です。変化はストレスにもつながるので避けようするのは自然な流れと言えます。だからこそ一人一人の考えを尊重し、個々の解釈がまちまちにならないためにも、企画段階で社員の感情をしっかりと意識、反映するのが得策です。
そして、悪い点ばかり注視しないことも大切です。改善点ばかり意識していると「サーベイフィードバック=ネガティブな場」という考えが定着してしまいます。
課題を解決する目的が犯人探しのような生産性のない時間につながらないよう、あくまでもポジティブシンキングの場であるということへの周知徹底は大変重要です。
サーベイフィードバック(FB)のまとめ
目的を定期的に明確にして得られた結果のフィードバックを通じて組織全体のパフォーマンスの向上につながることがお分かりいただけましたでしょうか。
優秀な人材の確保に力を入れたい企業には特に推奨します。