この記事を読んでいる方の中には、会社で人事異動の発表があり、もうすぐマネージャー職やリーダー職に昇進される予定のある方がいらっしゃると思います。
昇進が嬉しい反面、今後どんな風にリーダーシップを取っていけばいいのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
そんな方に勧めするのは、最近話題の「セキュアベース·リーダーシップ」です。
本記事では『セキュアベース·リーダーシップ』(著:ジョージ·コーリーザー、スーザン·ゴールズワージー、ダンカン·クーム、翻訳:東方雅美)を参考に、セキュアベース·リーダーシップについて解説します。
セキュアベース・リーダーシップとは何だろう?
まず、セキュアベース・リーダーシップとは何でしょうか?
『セキュアベース・リーダーシップ』(著:ジョージ・コーリーザー、スーザン・ゴールズワージー、ダンカン・クーム、翻訳:東方雅美)中では、下記のように定義されています。
「フォロワーを思いやり、守られているという感覚と安心感を与えるのと同時に、ものごとに挑み、冒険し、リスクをとり、挑戦を求める意欲とエネルギーを持たせる。そうすることで、信頼を獲得し、影響力を築く方法。」
この定義、簡単なようで、実は中々難しいことを言っていますね。
私も初めてこの文章を読んだ時は、そんな事は可能なのだろうか?と半信半疑でした。
しかし「セキュアベース」と、「セキュアベースリーダー」について学べば、きっと誰にでも可能なはずです。
セキュアベース・リーダーシップの、「セキュアベース」
セキュアベース・リーダーシップを理解するには、まずは「セキュアベース」について知る必要があります。
『セキュアベース・リーダーシップ』(著:ジョージ・コーリーザー、スーザン・ゴールズワージー、ダンカン・クーム)の中で、著者はセキュアベースのことを、
『守られているという感覚と安心感を与え、思いやりを示すと同時に、ものごとに挑み、冒険し、リスクをとり、挑戦を求める意欲とエネルギーの源となる人物、場所、あるいは目標や目的』
と定義しています。
端的に説明すると、安心感や思いやりを示すことで、リスクがあっても挑戦してみようと思わせることができる人、場所、あるいは目標や目的とまとめられるでしょう。
しかし、「安心感や思いやりを示すとは、チームのメンバーに常に優しくしろって事?優しいばかりでは、チームがまとまらないのでは?」と思った方も多いのでは?
ここで具体例を用いて説明しましょう。
以前筆者が勤めていた会社のリーダーAさんは、大変気性の激しい人でした。
自席で堂々とチームメンバーの悪口を言い、機嫌が悪い時は怒鳴り散らし、問題が起こると大きな声で「何とかしなさい!」と叱責するタイプの人です。
チームのメンバーはAさんの機嫌を損ねないように、常にヒヤヒヤしていて、またピリピリもしていました。
しかし目標は達成しないと叱責されるかもしれないという不安から、メンバーは何とか目標を達成しようとはしていました。
そのようなリーダーの元で、メンバーは事前に立てられた目標以外に、何か新しい事に挑戦してみよう!という気持ちになるでしょうか?
答えは、NOです。
リーダーがいつ怒り出すかわからない環境は、チームメンバーをとても不安定な気持ちにさせ、現状維持に留まらせました。
更には、チームの雰囲気や環境に耐えきれず、異動希望者や退職者が続出。同時期に配属された複数の同僚も、入社後2年の間に半分が退職してしまいました。
もしAさんがリーダーとしてメンバーを思いやり、怒鳴るようなことはせず、問題が起こった際にメンバーに対する共感と協力を示すことで、セキュベースになっていたのであれば…
チームの雰囲気の悪化や、退職者の増加は起こらなかったのでは無いかと思います。
人が何かを頑張ろう、新しい事に挑戦しようと考える際、周りの環境はとても大切な要素の一つです。
もしあなたが、チームメンバーのセキュアベースになろうと思うのであれば、メンバーが安心して挑戦できるような気持ちを作り出すこと。
そして1人の人間として、尊重すること。
とても基本的なことですが、実はこれが一番大切なことではないでしょうか?
セキュアベースリーダーとは
セキュアベースについて理解が深まったところで、次はセキュアベース・リーダーについて解説します。
まず、『セキュアベース・リーダーシップ』(著:ジョージ・コーリーザー、スーザン・ゴールズワージー、ダンカン・クーム)の中で、著者はセキュアベースリーダーの特性を、九つ提示しています。
セキュアベースリーダーの九つの特性
1. 冷静でいる
2. 人として受け入れる
3. 可能性を見通す
4. 傾聴し、質問する
5. 力強いメッセージを発信する
6. プラス面にフォーカスする
7. リスクをとるように促す
8. 内発的動機で動かす
9. いつでも話せることを示す
この九つの特徴をまとめると、セキュアベースリーダーとは、落ち着いていて、他人の批判や非難は極力避け、プラスの面に目を向けることができ、部下に挑戦を促すことができる人。
そして部下とのコミュニケーションを、積極的に取る気持ちが普段からある人と言えるでしょう。
しかし人間ですから、これらのことを常に完璧にこなすのは難しいと思います。
常に完璧でなくても良いのです。必要な時にタイミングよく、組み合わせながら活用するという事を意識してみてください。
例えば、トラブルが起きたときには、1番と4番を組み合わせてみるとどうでしょう?
またお勧めの方法として、上記の特性の、全く反対のリーダー像を想像してみてください。
「気分にムラがあり、他人の批判や非難ばかりで、マイナスの面に目を向け、部下には現状維持ばかり求める人。そして部下とのコミュニケーションを、積極的に取ることはしないリーダー。」
こんな人がリーダーだとしたら、部下は仕事へのモチベーションが上がらず、チーム間の信頼は揺らぐばかりです。
そんなリーダーに、あなたはなりたいでしょうか?
良きセキュアベースリーダーになりたいと思うのならば、セキュアベースリーダーとしての特性を心掛け、少しづつ実行することから始めてみましょう。
セキュアベース・リーダーシップの根底にあるもの
ここまでセキュアベース・リーダーシップについて解説してきましたが、セキュアベース・リーダーシップの根底にあるものは何でしょうか?
それは信頼感です。
参考図書の中で、心に残った一節があります。
「リーダーがフォロワーに心を開くと、フォロワーもリーダーに心を開く」
どんなにセキュアベースリーダーの九つの特性を心掛けようと、部下への信頼感がなければ、ただ気持ちが上滑りしていくだけです。
信頼感を築くには、まずあなたが部下に対して心を開くこと。
友人を作る時と同じように、ある程度の(節度を持った)自己開示を行い、人間同士としての距離を縮め、信頼関係を結ぶように努力しましょう。
終わりに
良いリーダーになろうとすると、まずは優しく対応することを心掛ける方もいます。しかし優しさだけでは人の成長には繋がりません。
逆も然り、厳しさだけでも成長に繋がらないのが実情です。
セキュアベースリーダーシップは、部下に安心感を与えることで、新しい事にも挑戦しやすくする事です。それが組織の成長や、利益にも繋がっていきます。
セキュアベースリーダーの九つの特性を意識し、是非チームを引っ張っていく一歩を踏み出してみてください。